●導入
私は訴える!
今の日本に治外法権が存在することを。
日米地位協定第十七条とそれに関する密約のせいで、駐留米軍を日本の「法」で裁くことができないことを。
●小理念
本弁論では、治外法権の撤廃、つまり日本の法で裁くべき対象を裁けるようにすることを目指します。
●現状
日本は1960年に新日米安保条約を結びました。
日本側が土地と資金を提供し米兵の駐留を認め、アメリカ側は日本有事の際、共同防衛することを定めた条約です。
その際、在日米軍の扱いに関して結んだ規約が日米地位協定です。
本弁論で特に取り上げるのは、裁判権に関する規約である日米地位協定第17条とそれに関する密約、つまり在日米軍の犯罪時などの法的措置です。
では、駐留米軍の犯罪に対しての裁判権の所在について説明していきます。
裁判権は米軍の訓練や作戦行動中である「公務内」の事故や事件であればアメリカ側に、
プライベートな時間など公務を行っていない「公務外」のときの事故・事件であれば日本側にあるとされています。
しかし、「公務外」の事件であっても、日本が裁判権を放棄する旨の密約が1953年に結ばれ、日本は裁判権を放棄し続けてきました。
●現状分析
国際的には、駐留軍の事件・事故に関して、裁判権を、「公務内」なら、駐留軍側の国に、「公務外」であれば、受入国側にあるとされています。
日本と同様にアメリカと地位協定を結んでいる他国でも「公務外」の裁判権は受入国が持っています。
しかし、日本は密約のせいで司法権が他国に干渉されてしまっているのです。
●問題点
では、司法権がアメリカから干渉を受けることの何が問題なのでしょうか?
問題点は2点あります。
・法の制定者である日本国民の総意がないがしろにされているということ。
・被害者の権利を国家が保障していないこと。
一点目の国民の意志がないがしろにされていることに関して説明します。
司法権とは事件・事故に対して事実確認を行い、その国の「法」に基づいて刑罰を定める権力です。
この「法」とは、私たち日本国民と私たちの先祖の価値観に沿って、理想の社会を作るために生み出した、いわば意思です。
たくさんの人が集まると、理想の社会を作るためにルールが必要となります。
そのルールによって、自分たちの自由を制限し、理想の社会を維持してきました。
しかし、その社会に他国の人が入ってきて勝手に自分たちのルールを適用したとしたら・・・
それは、理想の社会を維持するために自由を制限した人々の意思を踏みにじる行為であり、理想の社会すなわちこの日本社会に対する侵略行為なのです。
この「法」の制定者は、全国民です!
つまり、意思をないがしろにされているのは、すべての国民なのです!!
次に、二点目の被害者の立場での問題点を説明します。
日本の裁判で事実認定を行うことで初めて、日本において彼らが被害者であると認定されます。
被害者を法律の保護下に置くためにも、日本が裁判権を手に入れる必要があるのです。
たしかに被害者にとって刑罰の量刑は重要です。
しかし、それ以上に日本の法で被害者と認定されるか否かが重要なのです。
犠牲者は、自分が日本社会に生きていながら、日本の法に保護されていないのではという不安に陥ってしまいます。
●理念
私は、司法権がアメリカに干渉されない社会の実現を訴えます。
私たちの「意志」である日本の「法」で裁くことのできる社会です!
日本社会での犯罪は日本の「法」が裁く。
日本社会の人たちの権利を日本の法で保証する。
この当然のことを、当然だと言える社会を実現させましょう!
●原因
なぜ、現在でも裁判権放棄の密約が撤廃されないのでしょうか?
原因は二点あります。
・1点目は、日米の取り調べ制度に違いがあるためです。
・2点目は、公務内・外の線引きが不明確なためです。
一つ目の取調べ制度の違いについて説明します。
被告人の権利を重視するアメリカの取調べは、弁護士同伴を認めています。
しかし、日本は弁護士の同伴を認めていません。
そのため、アメリカは日本の取調べ制度では被告人である米兵の権利が守られないと考えているのです。
現に密約締結時にアメリカ議会は、「司法制度が未熟な他国でアメリカ軍兵士を裁かせるわけにはいかない」という理由から裁判権を譲りませんでした。
また、2009年に起きた米兵のひき逃げ事件で、アメリカ側は「日本は取り調べに弁護士同伴を認めていない。それでは被告人の権利がないがしろにされてしまう」と言う理由で、被告人の引渡しを拒みました。
次に二点目の公務内・外の線引きが明確になされていないためという原因について説明します。
アメリカ側は日本国内で軍事行動を円滑に進めたいという思惑があります。
そのため、その作戦行動を軍法で保障するためにも公務内での裁判権が必要です。
公務内の範囲を明確に規定しなければ、作戦行動中に起きた事故への確実な保障できません。
しかし、現在は基準を設ける場がないため、公務内・外の明確な線引きを行えません。
線引きされてないことで、アメリカにとって公務内であっても、日本側は独自の判断で公務外と主張できてしまいます。
日本が公務外であると主張することで、アメリカは今後の作戦行動に支障をきたすことを危惧しているのです。
ここで、日米地位協定内で基準がなされていないのは、当時の両国にとってメリットがあったためです。
日本政府側のメリットとしては、国民に密約があったことが知れ渡らないことで政権転覆を阻止できたことです。
アメリカ政府側のメリットとしては、公務内・外を問わず裁判権を保有することで作戦行動を円滑に行えるということです。
●プラン
以上の原因を考慮して、公務外における裁判権放棄の密約を撤廃するプランを2点提案させていただきます。
・在日米軍が「公務外」で犯した事件・事故に対しては、アメリカ軍側が用意した弁護士同伴のもとで、取調べを行えるように地位協定を改正することです。
・各事案に対して両国で検討する専門の委員会を設けることを地位協定に記すことです。
では、一点目の取り調べ時の弁護士同伴を認めるプランの説明をします。
取調べ時に弁護士同伴を認めることで、アメリカが重視する被告人の権利を保障します。
2001年に韓国が弁護士同伴を条件として、裁判権を回復したように日本もアメリカに弁護士同伴を認める事で裁判権の回復を目指します。
次に二点目の各事案に対する専門の委員会を設置するというプランの説明をします。
各事案ごとに、両国が代表者を出して、アメリカ政府が出した「公務内証明書」に対して公務内・外の検討を行う専門の委員会を設けます。
地位協定締結時では、基準を明確にするメリットはありませんでしたが、現在は基準を明確にすることで、両国にメリットがあります。
具体的には、日本側は、公務外において日本の法で裁ける権利が得られます。
アメリカ側は、公務内・外を明確にすることで、公務内における事故に対しても、周辺住民の批判を抑える事が法的に可能となります。
これによって、今まで以上に公務内での作戦行動が円滑に行えるようになります。
以上の二点のプランによって、アメリカ側には、被告人の権利を保障するというメリットと、円滑な軍事行動を保障するというメリットを与えます。
この二つのメリットと引き換えに、裁判権放棄の密約を撤廃します。
そして、日本社会を日本の法律で裁ける社会にするのです。
●最後に
いざ、「前へ!」
戦後六十年間の不平等な密約に終止符を!
いざ、「前へ!」
司法権が他国に干渉されない日本を!
いざ、「前へ!」
アメリカに意見できる日本を!
ご静聴ありがとうございました。