「宇宙はゴミだらけ」
松本良介
[導入]
人類の進歩は止められない。
人類の歴史は、 進歩の歴史であります。
人類は、海を渡り、空を飛び、豊かな生活を手に入れてきました。
そしてついに、 宇宙を手に入れたのです。
[現状]
現在、私たちは、通信、測量、気象観測の分野で宇宙を利用しています。
人工衛星をもちいたサービスは、社会基盤として私たちの生活に密着しているのです。
これは宇宙インフラといい、水道や電気といった地上のインフラ同様、私たちの生活に欠かせません。
宇宙インフラには、安全かつ迅速な情報の伝達という利点があります。
それは、地上の出来事に左右されないという安全性、どんな場所でも瞬時に結びつけるという迅速性です。
例えば、災害現場において地上の伝達手段が使えなくなった時でも、衛星に影響はありません。
2008年の岩手・宮城内陸地震の際には、災害現場での通信に活用され、人命救助に貢献しました。
また、カーナビを通して、運転手に情報を提供し、交通渋滞の緩和に貢献しております。
衛星から測量することで、海運業に役立つ地図を作成することも可能となりました。
これにより、船舶は安全に航行でき、世界中の海上貿易を支えているのです。
また通信衛星は長距離電話やラジオ、メール、インターネットにも使われております。
世界で起こった出来事を衛星を通して、瞬時に知ることができるのです。
まさに、宇宙インフラは、現在のグローバル化の推進力なのです。
こうした衛星がもたらす、情報の価値は、計り知れません。
しかし現在、宇宙インフラに対する脅威が表れ始めました。
その脅威とは、宇宙のごみです。
ここで宇宙ごみとは、使い終わった、ロケットや人工衛星、燃料タンクなどのことをいいます。
この宇宙ごみは、ただのごみではありません。
わずか一センチの大きさであっても、衛星を破壊するだけの威力があるのです。
そうした宇宙ごみが、推定で三千五百万個、地球の周りに放置されたままです。
そして、宇宙ゴミは、互いにぶつかりあい、日々増え続けています。
このままいけば、五年後には五千万個、十年後には八千万個にもなってしまうのです。
これにより、宇宙ゴミと、人工衛星との衝突の危険性が高まっています。
そして、このことは、過去の事故の発生間隔が、15年、10年、3年と次第に縮まっていることからもわかります。
1957年以来、二十数年間起きなかった事故が頻繁に起こるようになったのです。
また、 このまま宇宙ゴミが増加し続けた場合、衛星の打ち上げ自体が不可能となります。
例えば、2008年には、宇宙ゴミの影響により、アメリカで衛星の打ち上げが延期されるという事態も生じました。
そして、現在では、NASAが推定している安全に衛星を打ち上げられる水準を下回っているのです。
このままでは、衛星を用いることができなくなり、社会の根幹である宇宙インフラは、根底から崩れ去ります。
宇宙インフラが破壊されたらどうなるでしょうか。
人工衛星のない社会を想像してみましょう。
まず、通信の安全性が崩壊します。
そうなれば、世界中の通信システムが崩壊し、インターネットが使えなくなり、衛星放送も途絶えてしまいます。
また、災害現場での通信手段がなくなります。
地震が起こったあとの被害を把握できず、瓦礫の下で苦しむ人々。
気象衛星がなくなればどうでしょう。
例えば、台風の発生を早く知ることが出来ず、航行中の船舶に通報が遅れてしまいます。
船舶が、台風の荒波に飲み込まれてしまうのです。
宇宙インフラが崩壊すれば、私たちの生活が、崩壊するのです。
[理念]
そこで、私は、自分たちの生活を守るために、宇宙のごみ問題の解決をめざします。
宇宙インフラの安全性を維持し、その上に成り立つ、豊かな生活を守りたい。
それが、私の目標です。
[原因]
では、宇宙でごみが生じる原因とは何でしょうか。
原因は、二つあります。
一つ目は、「使い捨てられた人工衛星などが宇宙に放置される場合」です。
二つ目は、「ごみとなった人工衛星などが互いにぶつかり合い、数を増やす場合」です。
[原因@]
まず、原因の一つ目、「使い捨てられた人工衛星などが宇宙に放置される場合」を検討していきます。
人工衛星などを宇宙に運ぶためのロケットや、使い終わった人工衛星はそのまま宇宙に放置されています。
こうした残骸は、地球の重力で次第に高度を下げ、大気圏で燃え尽きることになっています。
しかし、大気圏に突入するまでの時間というのは、なんと2000年もかかってしまうのです。
廃棄された人工衛星は、ごみとなって、燃え尽きるまでの長い間、宇宙を漂い続けるのです。
[原因A]
原因の二つ目は、宇宙ゴミの自己増殖です。
使い捨てられた人工衛星は、宇宙を漂う間に互いにぶつかり合い、その数を増やすのです。
現在、宇宙ごみは自己増殖の状態にあり、十年後には現在の二倍以上の数になってしまうのです。
[プラン]
こうした宇宙ごみの増加は、今後の宇宙利用活性化とともに、避けられないものであります。
そこで、私は、3つのプランを提案し、宇宙ゴミの問題を解決したいと思います。
この問題を解決して始めて、安全な宇宙インフラの利用が可能となるのです。
一つ目は、「宇宙ゴミ対策を担う国際機関である国連宇宙平和利用委員会に各国を束ねる権限を与えること」
二つ目は、「宇宙ゴミの抑制のために人工衛星に補助エンジンの設置を義務付けること」
三つ目は、「現在の宇宙ゴミを回収し、ゴミの数を削減すること」です。
まず一つ目のプランについては、宇宙ゴミ対策を担う国連宇宙平和利用委員会に各国を束ねる権限を与えます。
今までは、各国を束ねる権限がありませんでした。
現在、各国が独自に行なっている宇宙利用を管理し、宇宙ゴミの対策を進めていきます。
全人類が用いる宇宙、共有の財産である宇宙だからこそ、全ての国家の協力を求めます。
以下、宇宙ゴミの抑制と削減をこの機関を主体として進めていきます。
次に二つ目のプラン、抑制策を説明します。
これは、今後打ち上げる人工衛星に、補助エンジンを設置することを義務化します。
この補助エンジンとは、人工衛星の高度を下げることで、大気圏で燃え尽きるのを早めるためのエンジンです。
これにより、人工衛星は軌道上に残りません。
この結果、人工衛星に宇宙ゴミが衝突する可能性が下がるのです。
最後に、三つ目のプラン、削減策について説明します。
つまり、今ある宇宙ごみを取り除くことで、衝突の危険性を抑えるのです。
具体的には、除去システムとして小型衛星を用います。
小型衛星からアームを伸ばしてごみを確保し、安全な高度まで誘導するというものです。
このシステムで年間、5から15、宇宙を漂う衛星を回収します。
継続的に宇宙ゴミを除去していくことで、現在の増加を止めるとともに、将来の危険性を取り除いていくのです。
これにより、宇宙ごみの自己増殖を止めることが出来ると、JAXAの研究で分かっております。
この結果、宇宙ゴミは、十分に安全な水準に抑えることが出来るのです。
回収の費用については、平和利用委員会のもとで基金を創設し、加盟国で負担しあいます。
以上三つのプランにより、軌道上の安全性は確保されます。
そして、我々は宇宙インフラを使い続けることができ、豊かな生活を守ることができるのです。
[最後に]
このままでは、人類は地球に閉じ込められてしまう。
人類は将来、宇宙を手放すのでしょうか。
否!
人類の進歩は止められない。
人類の進歩のために、守りましょう。
我々の宇宙を。
人類の財産を。